相続と一人の女を巡って争うカラマーゾフ家の父と長男ミーチャ。その愛憎劇を主軸に、サスペンス、ミステリー、法廷劇、ロマンスなど多彩な読みどころを配した傑作巨編。

夫との間に子もある貴婦人アンナが、社交界きっての貴公子ヴロンスキーと恋に落ち人生を狂わせていく様子が、鋭い人間観察力に裏付けられた状況描写、心理描写で描かれる。

下級役人のアカーキエヴィッチは、何か月もの倹約生活の末、ようやく外套を新調。しかし、すぐに悪漢たちに剥ぎ取られてしまう。警官はまともに取り合わず、同僚の勧めで訪ねた有力者も、手続きを踏まずに来た彼を叱責するばかり。彼はついに憤死してしまうが、物語はそれでは終わらない！

十六歳の夏、別荘で出会った年上の女性に抱いた恋心。しかし彼女のそばにはいつも多くの"崇拝者"たちがいた。そして、あまりに意外な恋敵が出現し…。

これまで不倫を重ねながらも、誰も愛することがなかった中年男グーロフ。休暇を過ごす町で出会った人妻アンナを、"生まれて初めて"本気で愛してしまう。アンナもまた夫への不満からグーロフを受け入れる。そして休暇を終えて別れた後も、二人の情愛は狂おしいまでに高まっていき…。

下級階層に生まれ、出世欲の強いジュリアン。僧侶を目指すのも権威を得るためで、信仰心からではなかった。聡明さを買われ、有力者レナール家の家庭教師になると、彼はレナール夫人に恋を仕掛け互いに愛し合うようになる。事が発覚し家を追われた彼は、やがて宮廷貴族の秘書に取り立てられ、今度は貴族の令嬢マチルドの愛を勝ち取ることに成功する…。

文学や芸術を愛し、ロマンティックな夢想にふけるのが好きだったエマ。医者のシャルル・ボヴァリーと結婚するが、思い描いていた幸福感は得られず、退屈な田舎暮らしが続く。幻滅したエマは、夫以外の男たちと次々と情事を重ね…。

大臣主催の夜会に招待された小役人のロワゼル夫妻。上流社会に憧れる夫人は、なけなしの金でドレスを仕立て、ダイヤの首かざりを人に借りて夜会に臨む。その甲斐あって夫人はひときわ脚光を浴びもてはやされるが、いつの間にか首かざりが紛失していた。夫妻は弁償のため莫大な借金をするが…。

十五歳の「僕」は両親の知り合いの娘で年上のマルトと恋に落ちる。マルトにはジャックという婚約者があったが、結婚する頃その愛はすでに冷めていた。ジャックが出征中に「僕」とマルトは逢瀬を重ね、マルトはついに妊娠してしまう…。

砂漠に不時着した飛行士の前に現れた、金髪の不思議な少年。少年はある星の王子で、星めぐりの旅の最後に地球にやってきていた。王子の語るさまざまな話から、大人たちが忘れてしまった"たいせつなこと"が浮かび上がる。

学業優秀なハンスは、周囲の期待を一身に背負い神学校に合格する。そこで彼は、詩的な感性が鋭く自分自身の考えをしっかり持っているハイルナーと出会い、勉強一辺倒だった自分の生き方に疑念を持ち始める…。思春期ならではの友情、理想と挫折を描くヘッセの自伝的小説。

アルプス山中の療養所「ベルクホーフ」に従兄弟を見舞ったハンスは、自身にも病気が見つかり療養生活を始めることになる。個性的な患者たちとの出会いや別れ、友情や恋愛を通じて思索を深めていく青年の姿が描かれる。死が日常的な療養所で展開する「肉体と精神の冒険」は、果たして主人公をどのような希望に導くのか…。

婚約者のいるロッテという美しい娘に恋をしたウェルテル。ロッテもまた、彼の気持ちに応えるようになるが、そこへ旅に出ていた婚約者が帰ってきて…。

老いて仕事ができずエサをもらえなくなったろばが、ブレーメンで音楽師に雇ってもらおうと旅に出る。途中、同じ境遇の犬と猫、さらに食料にされかけていた鶏を仲間に加えると、泥棒たちが住む一軒の家にたどり着く…。

両親と妹の暮らしを一身に支えていたグレーゴルが、ある朝突然、巨大な虫に変身した。それでもグレーゴルは会社に出ようともがくが、ベッドから起きることもままならない。家族は息子の姿を恐れ、戸惑い、一度は受け入れるものの、次第にその存在を疎ましく思い始め…。

イギリスの貿易都市に生まれたロビンソン・クルーソーは、生来の放浪癖から父の反対を押し切り船乗りとなり、やがてブラジルで農園経営を始める。ある時、航海中に船が難破、無人島にただ一人流れ着き、28年にも及ぶ無人島生活が始まる。終盤、島からの脱出に向け急展開する活劇はスリル満点。

英国ヨークシャーの荒野を舞台に繰り広げられる愛憎劇の大作。「嵐が丘」という名の屋敷の主人に引き取られてきた孤児ヒースクリフが、自分を虐げた者への半生を賭けて復讐を遂げる過程を、激しくもはかないロマンスを交えて描く。

ある夜、王子ハムレットは城壁に現れた亡霊から恐るべき事実を聞かされる。国王だった父の死が、叔父による毒殺だったというのだ。新国王の叔父とその妃になった母への憎悪、思いを寄せるオフィーリアとの恋…ハムレットは運命のいたずらに動揺しながらも、復讐に自身を駆り立てていく…。

強欲な商人スクルージはケチなあまりクリスマスさえ祝おうとしない。ある年のクリスマスイブ、彼の前に商売仲間だった亡き友人の霊が現れる。その後次々と現れる幽霊たちに導かれスクルージが見せられた光景とは…。

善良な紳士ジーキル博士は、邪悪な心をあわせ持つ極度の二重人格者だった。自分の邪悪な人格だけを宿す醜悪な人物に変身できる薬を調合した博士は、ハイド氏として享楽的、暴力的な生活を楽しむようになる。しかしある朝、薬を飲まなくてもハイド氏に変身している自分に気づき…。

不義密通の罪でさらし者になる罰を受けるへスター・プリン。衣服の胸には、その罪を示す緋色の文字「A」が刺繍されている。しかし、へスターは毅然と赤ん坊を抱き、相手の男の名を明かさないまま人々の前にさらされる…。

自由を求めて家を飛び出したハックルベリイの冒険物語を、話し言葉を活かした文体でユーモラスにつむいでいく、疾走感あふれる展開の中にも、人間の滑稽さ、残酷さ、あたたかさが描かれる。

酒乱になりペットを虐待するようになった「わたし」は、唯一かわいがっていた黒猫をも次第に虐待の対象にしていった。ある日、火事で家を全焼させてしまい、木に吊るしたままの黒猫を死なせてしまった「わたし」は、自責の念からその黒猫に瓜二つの猫を再び飼い始め…。

画家として将来を夢見るスウとジョンジー。ある日、肺炎にかかったジョンジーは気落ちし、窓から見える蔦の葉がすべて落ちたら自分は死ぬだろうと言いだす。助かる見込みは気力次第だと医者から告げられたスウは彼女を励ますが、蔦は最後の一枚を残すのみとなる。それを知った階下の老画家ベアマンは一計を案じ…。

長く魚を獲れずにいる老いた漁師の仕掛けに、ある日巨大なカジキがかかる、洋上の小舟を舞台に、老人と魚の生命力がぶつかる様子を、緊迫感あふれるタッチで描き出す。老人はついにカジキを捕らえるが、魚の血の匂いにサメが近づいてきて…。