烏(からす)知れば知るほど奥深い!珍しいモチーフの面白家紋と、その意味・由来

飛び烏(とびがらす)

記紀神話によれば、神武天皇の東征の折、三本足の八咫烏(やたがらす)が熊野から大和への道案内をしたという。そのためカラスは、熊野三山では太陽神を意味する神聖な存在として大切にされた。
三本足のカラスは紀元前より東アジアに広く分布する「射日(しゃじつ)神話」に登場する。これは複数の太陽を射落として一つの太陽にする話で、熊野の太陽神という見立てと一致する。熊野三山をはじめ、各地の熊野社でも鳥紋を神紋とする。
紀伊国熊野地方の豪族、熊野三党の榎本氏、宇井氏、穂積(鈴木)氏や雑賀(さいが)氏などが用いた家紋で、和歌山県を中心に大阪府、三重県に多い。

八咫烏(やたがらす)

3本の足を持つ八咫烏を、振り返るように描く。熊野権現を祀る神社で見ることができる。

那智烏(なちがらす)

那智烏(なちがらす)

3本の足を持つ八咫烏を、翼を左右に大きく広げて描く。熊野権現を祀る神社で見ることができる。

糸輪に八咫烏(いとわにやたがらす)

糸輪に八咫烏(いとわにやたがらす)

顔を左に向けて両翼を大きく広げ、三本足を持った烏を抽象的に描き、糸のように細い輪で囲う。

桜(さくら)知れば知るほど奥深い!珍しいモチーフの面白家紋と、その意味・由来

桜(さくら)

平安時代ごろからサクラはウメに代わって花の代名詞となった。サクラは山から降りた穀霊が宿り、田植えの時期を知らせる花として、木花咲耶姫(このはなさくやひめ)の化身にも見立てられた。花期が短く、木花咲耶姫が短命を象徴する神話で語られるからか、家紋としての使用家は多くない。
江戸時代の大名では細川氏、仙石氏、桜井松平氏が用いた。また奈良県吉野町の吉野神宮、宮城県塩竃市の鹽竈(しおがま)神社、石川県羽咋(はくい)市の気多(けた)大社などが神紋とする。桜井氏、桜木氏など、名字に「桜」の文字を含む家に多く、東海地方に多い家紋である。

九曜桜(くようさくら)

九曜桜(くようさくら)

中心にやや大きめの桜紋、その周囲に8つの小さな桜紋を巡らせ、「九曜」の形に描く。

雪月花(せつげっか)

雪月花(せつげっか)

「雪輪」と「三日月」を組み合わせた円の中に小さく「向う山桜」を描いて、四季折々の情景を表現する。

八重桜(やえざくら)

八重桜(やえざくら)

「桜」の花弁を重ね、八重咲きに描く。兵庫県神戸市の生田神社の神紋。

駒(こま)知れば知るほど奥深い!珍しいモチーフの面白家紋と、その意味・由来

駒(こま)

駒紋は将棋の駒を描いた家紋である。将棋はインドで生まれたチャトランガを起源とするゲームで、中国では当初「象戯(しょうぎ)」と呼ばれていた。日本には遣唐使によって伝えられたという。現在の将棋のスタイルは室町時代後半に小将棋から発展して完成された。駒紋は江戸時代以前の文献には現われないことから、比較的新しい家紋であろう。
将棋の駒を1〜5つ組み合わせて紋を作る。多くは無文の駒だが、数種類の駒も確認されている。名字に「駒」の字を含む家に多い。
駒形氏、須貝氏、高野氏、小針氏などが用いた家紋である。

三つ盛り駒(みつもりこま)

三つ盛り駒(みつもりこま)

無文の将棋駒を、3つ山積みに並べて描く。

丸に一つ駒(まるにひとつこま)

丸に一つ駒(まるにひとつこま)

駒をシルエットで描き、丸で囲う。

頭合せ四つ駒(かしらあわせよつこま)

頭合せ四つ駒(かしらあわせよつこま)

無文の将棋駒を、4つ頭を寄せて十字に描く。

月星(つきほし)知れば知るほど奥深い!珍しいモチーフの面白家紋と、その意味・由来

月星(つきほし)

月星紋は月や星を象(かたど)った家紋である。インド起源の菩薩信仰と道教の星辰信仰とが習合して白鳳時代に伝来した。平安中期の鎮守府将軍平良文は北斗七星を神格化した妙見菩薩を信仰し、その孫の将常、忠常兄弟から出た秩父平氏や千葉氏は月星紋を家紋とした。両氏族が繁栄し、鎌倉時代に諸国に領地を得て赴任したことで、月星紋も全国に拡散した。
妙見菩薩は剣を持つ軍神として武士が信仰し、信仰者の間で月星紋も多く用いられた。
江戸時代の大名家では30家以上、幕臣では200以上の家が用いた。東日本、とくに東北地方に多い。

丸に九曜(まるにくよう)

丸に九曜(まるにくよう)

1つの星の周りに8つの星を巡らせ、周囲を丸で囲う。

半月(はんげつ)

半月(はんげつ)

左上部の欠けた三日月を描く。

月に北斗星(つきにほくとせい)

に北斗星(つきにほくとせい)

軍神である妙見菩薩への信仰を表わす北斗七星に三日月を添える。

まだまだある、日本の家紋知れば知るほど奥深い!珍しいモチーフの面白家紋と、その意味・由来

丸に朝顔(まるにあさがお)

丸に朝顔(まるにあさがお)

やや斜め上から見た朝顔の花を、丸で囲う。多くの植物紋がモチーフをデフォルメして描かれるのに対し、朝顔紋は比較的写実的に描かれる。また家紋としての成立が比較的新しいことから、紋形のバリエーションは多くない。この紋は深川姓での使用が確認できる。

丸に二つ鈴(まるにふたすず)

丸に二つ鈴(まるにふたすず)

神社の本殿の前に吊るす本坪鈴を2つ斜めに重ね、丸で囲う。清浄な音色は邪気を祓い、神様を呼び出す。この紋は、鈴紋の中では一つ鈴紋と並んで多く見られ、日本で2番目に多い鈴木氏が多く用いるため、各地で見ることができる家紋である。鈴木氏の同族である亀井氏、穂積氏などでも用いられている。

六連銭(ろくれんせん)

六連銭(ろくれんせん)

無文の裏銭を上下に3枚ずつ横並びに描く。信濃国の真田家など、海野氏一族が多く用いる家紋である。6枚の裏銭は死後に必要とされるという六道銭を意味し、地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上の6つの世界の地蔵に渡す報賽であるとも、三途の川の渡し賃としての冥銭ともいわれる。霊界への駄賃となる六連銭の軍旗は戦場でも恐れられたという。

半鐘(はんしょう)

半鐘(はんしょう)

半鐘を細部まで丁寧に描写した家紋。この紋とは少し意匠が異なるが、伊達政宗の重臣、片倉景綱が旗指物に半鐘の紋を用いた。片倉氏が城主だった白石城がある宮城県白石市は、その片倉家の半鐘をモチーフにした市章を設定している。

百足の丸(むかでのまる)

百足の丸(むかでのまる)

1匹の百足を、頭部を中にして尾を時計回りに伸ばして円形に巻き、ヒゲと多数の足を写実的に描く。百足紋の中で半数以上はこの紋を用いているが、回転方向が逆のものもある。

左三つ巴(ひだりみつともえ)

勾玉状の巴を3つ寄せ、渦を巻くように描く。左右の呼称は尾が反時計回りに流れるものを「左」、時計回りに流れるものを「右」とする。巴紋の中では最も多く用いられる紋形で、家紋の中で最も古い歴史を持っている。後世では水の渦巻きを表したとされるが、本来は雷鳴をイメージした家紋である。八幡神社をはじめとする誉田別尊(ほむだわけのみこと)(応神天皇)を祭神とする神社で神紋とされる。

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