第1巻朗読：中村俊介

『山月記』中島 敦

若くして官僚となった秀才・李徴。傲慢だった彼は一介の役人の身分に満足できず、辞職し詩人として名声を得ようと考える。しかし、うまくいかずに生活は困窮する一方。精神的にも追い詰められていった。ついに発狂した李徴は、消息を絶つ。翌年、親友・袁さんが山奥で出会った李徴は、変わり果てた姿となっており……。収録時間：25分06秒

『名人伝』中島 敦

紀昌は天下一の弓の名人になるべく、名手・飛衛のもとで修行を積む。やがて師から学べることは何もなくなったと感じた紀昌は、さらなる名人を求めて山奥に隠棲する老師・甘蠅のもとを訪れる。飛衛によれば、鍛練を積んだ紀昌の技も、甘蠅の前では児戯に類するという。甘蠅を訪れた紀昌は、その驚くべき弓技を目の当たりにし……。収録時間：23分10秒

第2巻朗読：笹野高史

『藤十郎の恋』菊池 寛

京都の人気歌舞伎役者、坂田藤十郎は、自身の芸に行き詰っていた。そこで、新進気鋭の歌舞伎作者、近松門左衛門に頼る。近松が藤十郎のために書き下ろした作品は、「人妻との命を賭した色事」だった。しかし人妻との恋の経験がない藤十郎は、またも悩んでしまう。そんなとき、昔馴染みのお梶と再会して……。収録時間：57分19秒

第3巻朗読：麻生祐未

『約束』小泉八雲

故郷・出雲へ帰る赤穴宗右衛門は、義弟の丈部左門に「重陽の節句に必ず戻る」と約束する。時がたち、重陽の節句を迎えるも赤穴は帰ってこない。諦める母をよそに、一人信じて待ち続ける丈部。月も沈みはじめたころ、諦めかけた丈部のもとにようやく赤穴が姿を見せるが、様子がおかしく……。収録時間：13分14秒

『破約』小泉八雲

病に伏す女は死の間際、侍である夫に「再婚しないこと」を約束させる。しかし、女の死から一年がたったころ、家督のこともあり侍は再婚することとなった。ある夜、侍が出仕で家を空けると、一人になった新妻は言いようのない不安に襲われる。やがて身も凍るような恐ろしい声が聞こえて……。収録時間：25分50秒

『果心居士』小泉八雲

巧妙に描かれた地獄絵図を見せ、大衆から布施をもらって生計を立てていた老人、果心居士。それを見た織田信長の家来・荒川は、絵を渡すよう促すも、果心居士は百両もの金を要求し、取引は流れる。そこで荒川は、城を後にする果心居士を尾け、絵を強奪する。しかし信長の前でひろげると、絵は白紙になっていて……。収録時間：25分55秒

第4巻朗読：市毛良枝

『きりぎりす』太宰 治

貧乏画家のもとに嫁いだ「私」。質素な生活でも幸せを感じ、夫の才能を理解できるのは自分だけ、とさえ思っていた。やがて、夫の絵が画壇で認められるようになる。はじめのうちは成功を喜んでいた「私」も、生活が豊かになるにつれ、人が変わったように俗悪になっていく夫に複雑な感情を抱いて……。収録時間：50分26秒